認知症を予防する
脳血管障害にならないためには高血圧や高脂血症、糖尿病などの生活習慣病を予防することですが、こうした生活習慣病はアルツハイマー病の発症も早めることが最近わかってきました。アルツハイマー病および認知症予防については、海外でさまざまな研究がなされており、メタボリックシンドロームの人はアルツハイマー病になりやすいことが報告されています。
認知症予防には、頭を使う習慣、適度な運動、食べ物をよくかむこと、社交の場に積極的にでること、ストレスを避けることなどがよいとされています。
脳を活発に使うと神経細胞の間の新しい繋がりを増やし、新たに神経細胞を作る可能性もあります。最近の脳科学によれば、脳の中でも記憶をつかさどる海馬の神経細胞は増えることが確認されています。複雑に入り組んだロンドン市内の道を走るタクシー運転手の脳を調べたところ、ベテラン運転手ほど海馬が大きいことがわかりました。物事を学習することが海馬神経の増殖能力を高めるのです。
運動は脳の血行をよくし、神経ネットワークの発達を促します。使わなければ衰えるのは身体も脳も同じです。複雑な仕事をこなした人は認知症になりにくいこと、多くの身体活動をしている人、そして活動時間数よりも活動の種類が多い人ほど認知症になりにくいことが報告されています。
噛むことで、理解力に関係する前頭前野の神経細胞の働きが活発になることは、日本で確認されました。厚生労働省が提唱する「80・20運動」は、80歳で自分の歯を20本残そうというものですが、実際に自分の歯が多く残っている人に認知症が少ないという報告があります。
認知症と食習慣が深く関係していることも数多く報告されています。
1週間に1回以上、魚または海産物を食べる人の方が認知症になりにくいことが報告されているほか、1週間に3回以上果物と野菜のジュースを飲む人、あるいは、地中海風の食事をとる人はアルツハイマー病になりにくいことなども報告されています。地中海風の食事とは、フルーツジュース、野菜、豆類、穀類、オリーブオイル、魚が多く、肉が少なく、適量のワインのある食事のことです。
アルツハイマー病患者の食生活を調べたところ、肉の摂取量が多く魚と野菜の摂取量が少ないことや、極端に甘いものの摂取が多い、食事以外に水分をほとんどとらない、女性ではカロリー不足といった例が多く見られています。
刺激ある環境が認知症を防ぐ 読書やカード遊びなどの環境刺激がアルツハイマー病のリスクを減らすと経験的に言われていましたが、実際に、トンネルや回転車などのおもちゃを入れた豊かな環境で育ったマウスの脳では、βアミロイドを分解する酵素が増加していることが実験によってわかりました。
食う寝る遊ぶ厚生労働省の研究班の研究結果で、「よく運動し、栄養に気をつけて、昼寝をした」方が認知症の発生率が低いことが明らかになっています。
音楽療法と認知症音楽を聴いたり歌ったりして心を落ち着かせる「音楽療法」が、認知症のケアに活用されています。
気分をリラックスさせるために静かに音楽を聴く「受動的音楽療法」と、参加者が自ら積極的に歌を合唱したり楽器を演奏したりする「能動的音楽療法」がありますが、昔の流行歌や童謡、唱歌などのなじみの曲を聴かせると、歌と当時の経験や感情とが結びつき、脳が刺激され、意欲を取り戻す効果があります。また、歌を歌い、手で楽器を演奏する事は、効率よく大脳の神経細胞を刺激します。
ちなみに、バイオリニストやピアニストは、指を動かす脳領域がふつうの人に比べ広くなっています。それは、一般の人以上に指や手を動かすから指や手を動かす脳部位が広くなったのであって、はじめから指の脳の領域が広かったわけではありません。事故などで手足を切断した場合、脳の対応する部分は萎縮したり、他の領域に占領されてしまいます。