2011年11月「GLOBAL」第70号収録
日本人は魚食を好み、たんぱく質の約2割は魚介類で摂取しています。水産加工練り製品に多く利用される白身魚の魚肉には、内臓脂肪の蓄積を抑えるなどの抗メタボ効果があることが報告されています。さらに筋肉を増やす効果が高く、しかもパワーを出しやすい速筋の筋肉に変えていく作用のあることが、明らかになりました。魚肉たんぱく質の新しい機能について、水重貴文先生にお話を伺いました。
《日本人のたんぱく質摂取》
抗メタボ効果も期待できる魚介類のたんぱく質で約2割を摂取
たんぱく質は三大栄養素の一つで、人間が生きていく上で特に重要な栄養素です。主な役割は、筋肉や血液などの体をつくる主要な成分になることですが、酵素など生命の維持に欠かせない多くの物質の成分にもなります。
体をつくっているたんぱく質の一部は常に分解され、食事でとったたんぱく質を材料にして、新たにつくり直されます。このため、私たちは毎日の食事でたんぱく質を補給しなくてはならないのです。
たんぱく質を豊富に含んでいるのは、魚介類、肉類、卵類、乳類などの動物性食品と、植物性食品の豆類です。日本人がどのような食品からたんぱく質をとっているかを見ると、乳類、肉類についで、約2割を魚介類で摂取しています(図1)。昔から日本人にとって魚介類は貴重なたんぱく源でした。しかし、1975 年以降の摂取量の推移をみると、肉類の摂取は増加していますが、魚介類の摂取は1995 年以降、減り続けているのが現状です(図2)。
■図1 日本人の摂取する主なたんぱく質食品(1人1日当たりの摂取量(g))


■図2 たんぱく質食品摂取量の推移


肉類や卵類は良質なたんぱく質食品ですが、摂取量が増えると動物性脂質のとり過ぎになり、メタボリックシンドロームを招く可能性もあります。これに対して魚介類、なかでも白身魚の魚肉は良質なたんぱく質を補給しながら、メタボリックシンドロームを予防する効果が期待できるのです。
また、日本のような超高齢社会(65歳以上の高齢者が人口の21% 以上を占める社会)では、「たんぱく質の摂取で高齢者の健康を維持する」という視点も大切です。摂取しているたんぱく質の「質と量」が不十分だと、全身の筋肉量が減り、歩行などの日常生活動作(ADL / Activities of Daily Living)を行う能力が低下して、自立した生活を営めなくなる恐れがあります。
加齢によってどのくらい筋肉が減るものなのか、20歳と80歳の男性の筋肉量を比較してみましょう。全身の筋肉量が低下しますが、特に足の筋肉は減少率が大きく約3割も減ってしまいます(図3)。
筋肉や骨、軟骨、関節などの「運動器の障害により、要介護となる危険性の高い状態」を「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」、筋肉量が減り筋力も低下する状態を「サルコペニア」といいます。どちらも高齢者の生活の質(QOL / Quality of Life)を低下させる疾患として近年注目されていますが、食事や運動の積み重ねによって、ある程度は予防することができます。
■図3 20歳時と80歳時の筋肉量の変化

