炭火焼きは遠赤外線加熱
食品を直火焼きで加熱する場合は、熱源で熱せられた空気の対流による加熱もありますが、主な加熱は放射によるものです(図表2)。
放射では、熱源が発生する赤外線が直接食品表面に吸収され、そこで分子運動が起こってはじめて発熱します。温度の高い熱源はどれも赤外線を放射していますが、熱源の温度が高いほど放射の伝熱量は大きくなります。また、発生する赤外線の中でも波長の長い遠赤外線が、特に食品のごく表面付近で効率よく熱に変わり、食品そのものの温度を上昇させる効果が強くなります。
昔から魚を焼くときに、「炭火の遠火の強火」がよいといわれています。炭火は表面温度が300~600℃の高温になるため放射の熱量が大きく、遠赤外線が多く放出されます。その効果で魚の表面の水分は蒸発して香ばしくなり、内部はほどよく水分が残って火の通った状態に焼き上げられます。
同じ直火焼きでもガスの火では、放射熱の発生は少なく、遠赤外線の効果もありません。炎が直接あたって焼きムラもできてしまいます。そこで金属製の魚焼き器を使って、ガスの火をいったん放射熱に変えるのです。
遠赤外線は石やセラミックを焼いても発生します。そのよい例が石焼き芋です。昔よく使われていた七輪は、遠赤外線の発生が多い天然セラミックでできています。七輪と木炭の組み合わせは、まさに遠赤外線加熱のためのベストコンビなのです。
| 遠赤外線 |
|
遠赤外線は、太陽光に含まれる可視光線や紫外線と同じ電磁波の仲間です。
ものの表面からは、大小の違いはあるが電磁波の形でエネルギーが放出されています。そのエネルギー量はもの自体の温度が高くなるほど大きくなります。電磁波である遠赤外線は、空気に吸収されにくく、食品など高分子物質には吸収されやすい性質があります。吸収された遠赤外線のエネルギーは、電子レンジのマイクロ波と同様に物質の分子を振動させて温度を上昇させます。これが遠赤外線加熱です。
金属酸化物などの各種セラミックス材料は遠赤外線を放射しやすいので、暖房機や乾燥機などに組みこまれている遠赤外線ヒータ材料や、保温繊維の体温再放射材料として使われています。
|
鍋が発熱する電磁誘導加熱
| ●図表3 IH調理器の仕組み |

 |
IH調理器と呼ばれて電磁プレートや炊飯器などで使われているのが、電磁誘導を利用した誘導加熱(IH/インダクション・ヒーティング)と呼ばれる加熱法です。
誘導加熱の特徴は火を使用せず、鍋底自体を発熱させることです。トッププレートの下の磁力発生コイルに電流が流れると磁力線が発生し、その磁力線が金属を通るときに渦電流に変わり、過電流の流れる金属に抵抗があるため鍋底が発熱します(図表3)。火を使用しないため、炎の立ち消えや不完全燃焼の心配がありません。鍋は鉄やステンレスなどの磁力を持つものに限らますが、熱効率が高く食品を早く加熱することができます。発熱を電気的に制御できるために温度管理が容易で、天ぷらのような揚げ物、煮物などの調理に向いています。