白身魚タンパク質の筋肉増加効果について

2017年10月2日

日本水産株式会社(代表取締役 社長執行役員 大木 伸介、東京都港区、以下ニッスイ)の生活機能科学研究所では、白身魚であるスケソウダラのタンパク質の筋肉増加効果について、2009年より愛媛大学と研究を開始し、現在では立命館大学・愛媛大学・東京大学・京都府立大学など7つの大学や研究機関と研究体制を整え、共同研究を行っています。

その過程で、スケソウダラのタンパク質が、ラットの試験において、筋肉内の瞬発力を司る「速筋」を増やす効果があることを発見し、その作用機序の解明を中心に研究を進めてきました。また近年、実用化に向けた研究にも並行して着手し、このほど日本アミノ酸学会の第11回学術大会(2017年9月30日~10月1日、京都府立大学稲盛記念会館)において、その成果を発表しましたので、お知らせします。

なお、この研究の一部は内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の「次世代農林水産業創造技術」(管理法人:国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター)との共同研究によって実施されています。

今回発表の研究成果

(1)立命館大学・藤田聡教授(注1)によるヒト臨床試験

年平均で1.0~2.0%の除脂肪量(筋肉量の指標で、臓器と筋肉を含んだ総量)が減少するといわれる65歳以上の女性を対象としたヒト臨床試験(単群比較試験)において、運動の介入は行わず、通常の生活で3ヵ月間スケソウダラのタンパク質を毎日摂取した結果、摂取後に除脂肪量の増加が確認され、筋肉の増加が示唆された。

  • ボランティア:65歳以上の女性19名
  • 測定項目:除脂肪量(二重X線吸収測定法による)
  • 介入方法:3ヵ月間の栄養介入。スケソウダラ魚肉ミンチ4.5g入りのレトルトスープを毎日摂取。
  • 結果:全身の除脂肪量が19名中15名で増加した。【図1】
    また、ボランティア19人の平均値で、統計的に有意に除脂肪量が増加した。【図2】
【図1】
各ボランティアの除脂肪量の増減
【図2】
介入前後の除脂肪量(平均値)

(2)愛媛大学・岸田太郎教授(注2)による有効成分探索

ラットによる実験で、スケソウダラのタンパク質中に含まれる有効成分を探索しました。タンパク質を分画し、ミオシンを多く含む画分において筋肉量を増加させることを確認しました。(注3)

(3)日本水産株式会社・内田健志研究員(注4)による有効量の検討

ラットによる実験で、スケソウダラタンパク質の333mg/kg以上の投与により、筋肉増加効果を示すことが確認できました。本結果により、ヒトへの有効量として、体重60㎏として1日3.3g以上のスケソウダラタンパク質を食べることで筋肉量を増やすことが示唆されました。(注5)

(4)東京大学・岡田晋治特任准教授(注6)によるメカニズムの解明

ラットによる実験で、上記の筋肉量の増加のしくみを解明しました。スケソウダラのタンパク質を与えたラットにおいて、運動後の筋増量作用に類似した遺伝子変動が起きることを確認しました。その結果、筋肉の合成が促進され、分解が抑制されることにより、筋肉の増大を引き起こすことが示唆されました。(注7)

(5)金沢学院大学・木戸康博教授(元・京都府立大学)(注8)によるタンパク質の質評価

タンパク質の質(体の中での利用されやすさ)に関する簡易評価法を、ヒト臨床試験で構築しました。その評価系において、スケソウダラのタンパク質の質を卵や小麦と比較したところ、小麦をはるかに上回り、卵と同等以上のタンパク質の質を持つことが分かりました。(注9)

まとめ

今回の研究発表を通じて、以下の機能を報告しました。

  • ヒトで筋肉増加作用を示す目安摂取量として体重60㎏として1日3.3g以上が示唆され、65才以上の女性の除脂肪量が増加することにより、筋肉量を増やす可能性があることが示された。
  • 筋肉増加メカニズムとして、運動模倣作用が示され、有効成分はミオシンである可能性が示唆された。
  • タンパク質としての質は、非常に良質であることが確認された。

ニッスイは、水産物が持つ特徴的な機能に着目した研究を継続するとともに、その成果を活用して、人々の健康的な生活に貢献する商品の開発をすすめていきます。

  • 注1 藤田聡教授(立命館大学スポーツ健康科学研究科)
  • 注2 岸田太郎教授(愛媛大学大学院生命機能学専攻応用生命化学コース栄養科学教育分野)
  • 注3 愛媛大学、東京大学、横浜薬科大学(研究代表:速水耕介准教授)の共同研究です。
  • 注4 内田健志研究員(日本水産株式会社生活機能科学研究所機能性素材開発課)
  • 注5 愛媛大学、東京大学、横浜薬科大学(同上)の共同研究です。
  • 注6 岡田晋治特任准教授(東京大学大学院農学生命科学科ILSI-Japan寄付講座「機能性食品ゲノミックス」)
  • 注7 愛媛大学、東京大学、横浜薬科大学(同上)の共同研究です。
  • 注8 木戸康博教授 (金沢学院大学人間健康学部健康栄養学科)
    (当時:京都府立大学大学院生命環境科学専攻栄養科学研究室)
  • 注9 京都府立大学と横浜薬科大学(同上)の共同研究です。

以上