スケソウダラタンパク質の サルコペニア・フレイル分野に関する研究成果について

2019年11月11日

日水産株式会社(代表取締役 社長執行役員 的埜 明世、東京都港区、以下「ニッスイ」)の食品機能科学研究所では、白身魚であるスケソウダラのタンパク質の筋肉増加効果について、2009年より愛媛大学と研究を開始し、2018年3月にスケソウダラタンパク質研究会を設立し、愛媛大学・東京大学・早稲田大学など12の大学や研究機関と研究体制を整え、共同研究を行っています。
このほど、本研究会から得られた以下の3件の研究成果について、第6回日本サルコペニア・フレイル学会大会(2019年11月9日~10日、新潟コンベンションセンター朱鷺メッセ)において発表しました。

なお、この研究の一部は内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の「次世代農林水産業創造技術」(管理法人:国立研究開発法人 農業・食品産業技術研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター)との共同研究によって実施されています。

(1)スケソウダラタンパク質摂取の骨代謝への影響

日本水産(株)食品機能科学研究所 吉田恵里子 研究員(注1)

ラットを用いた試験において、スケソウダラのタンパク質の摂取が骨形成を促進すること、またこれによって骨へのカルシウム蓄積量が増加して、カルシウムの体内保留率や骨密度の改善に有効である可能性が示唆されました。

■ラットの皮質骨幅の比較

疑似閉経状態で低カルシウム食により皮質骨幅(骨の表面の硬い部分)は顕著に低下しますが(下図右から2番目の棒グラフ)、タンパク源の1/3をスケソウダラタンパク質(「APP」、下図の右の棒グラフ)に置き換えた飼料を摂取することにより、オステオカルシンなどの骨形成にかかわるホルモンの分泌が増加され、皮質骨幅が有意に増加していました。

皮質骨幅

(2)朝の魚肉タンパク質の摂餌が高齢者の骨格筋量および筋力に及ぼす影響

早稲田大学 金鉉基 講師(注2)

先行する研究で、スケソウダラタンパク質は健常な高齢者の筋肥大効果があること、また時間栄養学において朝食時に十分なタンパク質を摂取することで骨格筋量・筋力が増加することが報告されています。
これらを応用して、65歳以上の要支援1~2の高齢者男女計25名を対象に、スケソウダラタンパク質を朝に摂取することが骨格筋量・筋力増加に有用かを試験したところ、自立歩行ができる高齢女性において、朝にスケソウダラタンパク質を摂取した場合、骨格筋量の増加に有効である可能性が示唆されました。

(3)スケソウダラタンパク質の摂取による骨格筋肥大効果

愛媛大学 藤谷美菜 助教(注3)

スケソウダラタンパク質の摂取が、運動を行わなくてもラットの骨格筋を肥大させる可能性を見出しました。
ラットを用いた研究で、ギプス固定による廃用性筋委縮(※)からの回復時に、スケソウダラタンパク質をタンパク源とする摂餌により骨格筋重量および腓腹筋中のIgf-1遺伝子(インスリン様成長因子、成長を司る)が有意に増加し、スケソウダラタンパク質は廃用性委縮からの回復に有効であることが示唆されました。
またギプス固定をせずにスケソウダラタンパク質を摂取した場合でも、骨格筋重量が有意に増加し、筋線維径を有意に増加させ、筋タンパク質の合成促進と分解抑制により筋肥大を引き起こすことが明らかになりました。サルコペニアの予防・改善に有効と考えられます。 (※)廃用性筋委縮:寝たきり、無重力状態、ギプスによる固定など、筋肉を動かさない状況が続くことにより、身体の筋肉量が減少すること

【まとめ】

今回の研究発表を通じて、以下の機能を報告しました。

  1. (1)ラットにおいて、スケソウダラタンパク質の摂取により骨密度が改善されたことから骨粗鬆症改善効果があることが示唆されました。
  2. (2)朝のスケソウダラタンパク質摂取は、高齢女性の骨格筋量増加に有効である可能性が示唆されました。
  3. (3)ラットにおいて、スケソウダラタンパク質摂取は筋タンパク質の合成促進と分解抑制により筋肥大を引き起こすと推測され、サルコペニアの予防・改善に有効であると考えられます。

ニッスイは、水産物が持つ特徴的な機能に着目した研究を継続するとともに、その成果を活用して、人々の健康的な生活に貢献する商品の開発をすすめていきます。

  • 注1 日本水産(株)・愛媛大学大学院による共同研究です。
  • 注2 早稲田大学・日本水産(株)・東京女子医科大学東医療センター・早稲田大学理工学術院による共同研究です。
  • 注3 愛媛大学大学院・日本水産(株)・宇都宮大学・横浜薬科大学・東京大学大学院による共同研究です。

以上

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