魚譜ポスター『海からの恵み』(資源・環境編)の発行について

2007年4月3日

日本水産株式会社(代表取締役社長 垣添 直也)は、この度、当社が所蔵する「魚譜」を使用したオリジナルポスター「海からの恵み」(資源・環境編)を作成いたしました。

今回ご紹介する魚譜は、日本水産株式会社が所蔵する魚譜原画1000余点を使用して、1961年(昭和36年)に50周年事業として発行した「日本水産魚譜」*1をベースに選定しました。

原画は、昭和初期に日本水産株式会社の前身である共同漁業株式会社の魚類研究者であった故熊田頭四郎氏が、画家の有田繁氏、富田喜久枝氏の協力を得て、魚の輪郭・細部・色彩を分類学上正確に描き、また日本画の手法で描写・彩色されたものです。

昨年8月に魚譜ポスターのシリーズ第一弾として「体型編」を発行し、この度、第2弾として、「資源・環境編」を発行いたしました。本企画に際し、監修を佐藤 哲氏(長野大学教授)にお願いし、世界の漁業資源と海の環境について考察しながら91種の魚譜を抽出・整理・配置いたしました。

本ポスターの発行に際して、第26回「海とさかな」自由研究・作品コンクール*2の募集活動の一環として、全国の小学校・団体、水族館、関係各機関等にてご紹介してまいります。

【図版】魚譜ポスター

このポスターを発行するにあたり、ご希望の方へお一人様1枚を無償(送料については宅配便着払い)にて差し上げます。発注方法は下記宛先までFAXにてお申し込みください。

宛先

ニッスイ魚譜ポスター係 日本レーベル印刷(株)東京支社
〒104-0031 東京都中央区京橋1-1-6 越前屋ビル8階
TEL 03(3272)4651 FAX 03(3272)8164 担当:石川 伊藤

  • *1「日本水産魚譜」は、檜山義夫教授(東京大学)、安田富士郎助手(のちの東京水産大学教授(現東京海洋大学))により編集され、日本水産中央研究所より発行しました。
  • *2「海とさかな」自由研究・作品コンクール(主催/朝日新聞社・朝日学生新聞社 後援/農林水産省・文部科学省・独立行政法人海洋研究開発機構・独立行政法人水産総合センター 協力/社団法人日本動物園水族館協会 協賛/日本水産株式会社)は今年で26回を迎えます。全国の小学生を対象に「研究部門」「創作部門」で作品を募集しています。「研究部門」では"観察図"を昨年新設し、「魚譜」を参考として紹介しながら募集活動を行っています。
    (コンクール専用のウェブサイト:http://umitosakana.com新しいウィンドウで開きます。

魚譜ポスター『海からの恵み』(資源・環境編)の解説

(監修:佐藤 哲長野大学教授(環境ツーリズム学部))

資源・環境編に掲載された魚種について

海の自然環境は私たちに漁業資源という豊かな恵みをもたらしています。しかし、その恵みは今、大きな危機に見舞われています。世界各地で漁業資源の枯渇と海洋環境の悪化が起こっているのです。この資源・環境編では海や川の魚を、漁業資源としてだいじょうぶか、自然環境に悪影響を与えていないか、という視点から分類しました。また、漁業資源としてよく利用されているにもかかわらず、資源としてどのような状態にあるか調査が行き届いていない魚も集めました。本ポスターが世界の漁業資源と海の環境について考えていくための一助になることを期待します。

本ポスターにおける魚の配置は、以下の分類により、中心にいくほど資源状況が悪い魚を配置しました。大別して、①資源状態が危険なもの、絶滅の危険があるもの。環境への悪影響があるもの、②それほど利用されていないもの、適切に管理されているもの、③私たちが日常的に食べているほかの魚とし、各々のカテゴリーでの状況をさらに細分化して対象魚を、個々の状況に応じて選出・色分け・配置を行いました。

資源状態が危険なもの、絶滅の危険があるもの。環境への悪影響があるもの

(1)国連食料農業機関(FAO)による"REVIEW OF THE STATE OF WORLD FISHERY RESOURCES:MARINE FISHERIES"(1997)で「限界まで利用」とされた漁業の対象である種を""黄色"、「過剰利用」「枯渇」に分類された魚を"赤"で示しました。カッコ内の国名はこの分類に用いられた2002年度の主な漁獲国です。

(定義)

①「限界まで利用」とは、資源を維持できる最大限、またはその近くまで利用されており、これ以上の増産は期待できない状態を言います。
②「過剰利用」とは、長期的に見て持続的と考えられるレベルを超えて利用されており、増産の余地はなく、資源の枯渇または崩壊の危険が大きいものです。
③「枯渇」とは漁獲努力の大小にかかわらず、漁獲量が過去の水準を大きく下回っているものです。

  • 「枯渇」
    ビンナガマグロ(スペイン、フランス、ギリシャ)タイセイヨウクロマグロ(フランス、イタリア、スペイン)
  • 「過剰利用~限界まで利用」
    メバチマグロ(日本、スペイン)マスノスケ(キングサーモン)(カナダ、アメリカ)ギンザケ(コーホーサーモン)(カナダ、アメリカ)
  • 「限界まで利用」
    スケトウダラ(日本・ロシア・北朝鮮)、太平洋産マダラ(日本・ロシア・韓国)、マアジ(日本・韓国)、カタクチイワシ(日本・中国・韓国)、マサバ(日本・中国・韓国)、サンマ(日本・ロシア・中国・台湾)、ニシン(ロシア・中国)、タチウオ(中国)、キハダマグロ(インドネシア・フィリピン)、カツオ(中国・台湾・インドネシア)、イトヨリダイの仲間(タイ、マレーシア、インドネシア)、ヒイラギの仲間(インド、インドネシア)、ニベの仲間(インド、タイ、マレーシア)、スマ(インド、タイ、マレーシア)、カラフトマス(ピンクサーモン)(カナダ、アメリカ)、ベニザケ(ソックアイサーモン)(カナダ、アメリカ)、オヒョウ(カナダ、アメリカ)

(2)国際自然保護連合(IUCN)が絶滅の恐れのある野生動植物をまとめたレッドリストで「絶滅危惧ⅠA」、「絶滅危惧ⅠB」に分類されたものを"赤"、「絶滅危惧Ⅱ」、「準絶滅危惧」に分類されたものを"黄色"で示しました。

(定義)

①「絶滅危惧ⅠA」CR:ごく近い将来において野生での絶滅の危険性が極めて高いもの。
②「絶滅危惧ⅠB」EN:ⅠA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの。
③「絶滅危惧Ⅱ」VU:絶滅の危険性が増大している種。現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続いて作用する場合、近い将来「絶滅危惧Ⅰ類」のランクに移行することが確実と考えられるもの。
④「準絶滅危惧」NT:存在基盤が脆弱な種。現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」として上位ランクに移行する要素を有するもの。

  • 「絶滅危惧ⅠA」:ノコギリエイ
  • 「絶滅危惧ⅠB」:キジハタ
  • 「絶滅危惧Ⅱ」:ホオジロザメ、トラフザメ
  • 「準絶滅危惧」:エドアブラザメ、シュモクザメ(アカシュモクザメとシロシュモクザメ)

(3)環境省が日本の絶滅の恐れのある野生生物の種のリストをまとめたレッドデータブック(2003年)でIUCNと同様のカテゴリーに分類されたもの"赤"または"黄色")と、絶滅のおそれのある地域個体群を含む種"黄色"を示しました。

  • 「絶滅危惧ⅠA」:アユモドキ
  • 「絶滅危惧ⅠB」:イチモンジタナゴ、ゼニタナゴ、シナイモツゴ
  • 「絶滅危惧Ⅱ」:ヒメダカ
  • 「準絶滅危惧」:アカメ、オヤニラミ
  • 「絶滅の恐れのある地域個体群を含む種」:イワナ(紀伊半島のイワナ(キリクチ))、西中国地方のイワナ(ゴギ))

(4)水産庁の「日本の希少な野生水生生物に関するデータブック」(1998年)で絶滅危惧、危急、希少に分類されたもので、(3)に含まれないものを、絶滅危惧を"赤"、危急、希少を"黄色"で示しました。

  • 「絶滅危惧」:カナガシラ
  • 「危急」:クロアジモドキ
  • 「希少」:ギス、マルイボダイ

(5)日本の淡水生態系において人間によって国外から持ち込まれた外来種が本来の環境に大きなダメージを与えています。「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)」において特に悪影響が大きい外来種として「特定外来生物」に指定されているものを"赤"、環境省が「要注意外来生物」としているものを"黄色"で示しました。

(定義)

「特定外来生物」
海外起源の外来生物であって、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、又は及ぼすおそれがあるもの。
「要注意外来生物」
外来生物法の規制対象となる特定外来生物や未判定外来生物とは異なり、外来生物法に基づく飼養等の規制が課されるものではないが、これらの外来生物が生態系に悪影響を及ぼしうることから、利用に関わる個人や事業者等に対し、適切な取扱いについて理解と協力をお願いするもの。
  • 「特定外来生物」:オオクチバス
  • 「要注意外来生物」:ソウギョ、ニジマス、カワマス、タイワンドジョウ(カムルチー)、ナイルティラピア

それほど利用されていないもの、適切に管理されているもの

一方で、世界の漁業資源のなかには資源が豊富で現在でも十分に利用可能なもの、適切な資源管理が行われているものもあります。上記のFAOによる分類で中程度以下の利用状態にあるとされたもの、米国の民間団体"Sea Food Watch"によって資源管理が適切で自然環境に配慮されているもの(Best Choices、最良の選択)に準ずるグループとして(Good Alternatives、優れた代替品)に分類されたものを青で示しました。

(FAO)

  • 「中程度に利用」:マイワシ(日本・中国)
  • 「中程度に利用」:ヒラの仲間(フィリピン産のコヒラ、コガネヒラなど)

(Sea Food Watch)

  • Good Alternatives(優れた代替品):シイラ、マカジキ

私たちが日常的に食べているほかの魚はどうでしょうか?

色分けされていない魚は、私たちの食卓によく登場する魚ですが、これらについては資源がどれくらいあるのか、捕りすぎていないのか、などについて、まだはっきりとした判断がついていません。中にはハタハタのように漁業者の努力によって枯渇状態から回復したと考えられている魚もいますが、一方では知らないうちに資源が減少しているもの、環境に悪影響が生じているものもあるかもしれません。海の恵みを未来にわたって利用し続けるために、海の資源と環境をたいせつにしていくためのさまざまな努力を行っていく必要があるでしょう。

以上