食品に関する研究

冷凍食品の製造研究:クリームコロッケのおいしさの向上

理想的なクリームコロッケの品質を目指して(業務用商品)

クリームコロッケは、ホワイトソースを衣で包んで揚げた食品であり、衣のサクッとした食感と、ソースのクリーミーさを同時に味わうことができる人気メニューのひとつです。ニッスイは、冷凍食品事業の黎明期である1960年代末からクリームタイプのコロッケを手掛けてきましたが、近年、特に競合が激しい業務用の商品でニッスイならではの強みや特徴をより明確に打ち出す必要が出てきました。そこで、大幅な品質向上のために新しい製造技術の開発が始まりました。

おいしさは食品の味や匂い、食感、食事する環境、体調などさまざまな要素によって決まる抽象的な感覚です。感じ方も人それぞれ異なりますので、これを客観的に具体化・数値化することは簡単ではありません。
ニッスイでは「おいしさ構成要素解析」という、官能評価と統計的手法を組み合わせた新しい解析方法によって、本当においしいと感じる理想のクリームコロッケの品質を数値化することを試みました(図1)。その結果、最も大事なのは「口どけの良さ」「やわらかさ」「なめらかさ」など、クリームの食感にかかわる項目であることがわかりました。理想的な品質を実現するために、レシピの改良だけでなく、製造工程を大きく変える新たな生産技術の開発が必要となりました。

おいしさと生産の安定性を両立させる生産技術

クリームコロッケは、ユーザーが油で揚げる際、衣が破れてクリームが出てしまういわゆる「パンク」現象が起きやすく(図1)、製造の難易度が高い食品といわれています。ニッスイは長年の生産工場の努力によって、パンクせず、安定的にクリームコロッケを生産する技術を磨いてきました。しかし従来の技術では、クリームの食感が硬くなり滑らかさが低下するという課題がありました。そこで、クリームコロッケの理想の食感を実現するため、生産工場と協力し、おいしさと生産安定性を両立する新規の生産技術の開発に取組みました。 

図1. フライ中のクリームコロッケのパンク(模式図)

従来の生産工程を食品科学的に分析し、工程を一つ一つ精査しました。その結果、パンクには複数の要因が関わっており、特に影響の大きい要因は、特定の工程でクリームに数%程度の空気が混入するためであることを突き止めました。
この空気混入を防止する新規の生産技術を生産工場や技術開発部と協働して開発し、理想の品質と生産安定性が両立できることを生産ラインで実証して、これまでにない品質を持ったおいしいクリームコロッケの上市に辿りつきました (図2・3)。

図2. 新規の生産技術が導入された業務用クリームコロッケ

図3. 新規生産技術の品質向上効果