おいしく栄養が摂取できる新しい食品素材
ニッスイでは、おいしく植物性タンパク質を摂取できる食品素材の開発を目指しています。 従来、広く用いられる植物性のタンパク質源としては、納豆や豆腐の原料である大豆が知られています。近年の植物肉(代替肉)ブームでは、大豆のタンパク質で作った組織化物(いわゆる植タン)が使用されています。これは、動物肉の弾力や噛みしめ感を再現するのに優れており、ハンバーグなどの増量剤として利用されてきました。しかし、独特の青臭さや苦み、飲み込みにくさなど、おいしさの面でまだ課題が残っています。近年は、大豆だけでなく、小麦、エンドウ豆、ソラ豆、ヒヨコ豆など、さまざまな植物のタンパク質原料が流通しています。これらは味風味や物性の面で異なる特性を持っており、大豆タンパク質だけでは表現できないおいしさを持った食品素材を生産できる可能性があります。
これらの組織化方法や加工方法はまだ十分に研究されていないなか、ニッスイでは、長年のすりみ研究で培ったエクストルージョン技術(タンパク質を加圧加熱して溶融・組織化する技術)を応用し、機械工学的なアプローチを用いて植物性タンパク質の組織化に取り組んでいます。
研究のアプローチ
ニッスイには、長年のすりみの研究を通じて培ったタンパク質の加工技術があります。特に、カニやホタテなどの筋肉繊維の形状や食感をリアルに再現することを目的として30年以上前に生み出された、高温高圧処理することですりみを組織化するエクストルージョンクッキングや、微細なノズルからすりみを打ち出して酸変性することで糸状の組織に成型する技術は、近年植物性食品の分野でも世界的に注目されている技術です。私たちはこうした海で培った技術を現在の技術と融合させることで、お客様に受け入れていただける新しい食品素材の開発に取り組んでまいります。
図.植物性組織化物の製造の様子とエンドウ豆組織化物を使ったスパゲッティ
研究成果
エンドウ豆タンパク質を原料として、100%植物性でカニ独特の繊維感を再現したイミテーションの生産方法を確立しました。
世界人口の急増に伴い、将来的にはタンパク質の供給量が需要を上回ることが予想されています。この状況は、肉や魚の価格上昇など、お客様の生活に影響を及ぼす可能性があります。そのため、植物性タンパク質を含む代替タンパク質の積極的な利用が世界的に求められています。
ニッスイは1911年に創業され、日本において動物性タンパク質として水産物を国民に安定的に供給することを目指しました。100年以上の歴史を持つニッスイは、世界のタンパク質供給に再度貢献する使命を担っています。私たちの研究では、植物性タンパク質を組織化し、おいしい食品を生産する技術の確立に取り組んでいます。これにより、既存の肉や魚の代替品だけでなく、新たなタンパク質食品を提供し、お客様の健康と食の喜びに貢献したいと考えています。