2024年5月17日開催

今後の水産事業の市場・販売環境をどのように見ているか教えて欲しい。

天然物の水揚げ数量による影響はあるものの、円安による輸入水産物の価格上昇などもあり、水産市況は上向きになるのではないかと見ている。水産物の需要については、畜産たんぱく質などが高値で推移している影響もあるが概ね底堅い水準で推移している。

国内養殖事業が24年度計画において減益を見込む背景について教えて欲しい。

24年度計画は飼料コストの上昇を織り込んでいる。天然物の水揚げ数量も影響して市況が形成されることから飼料コストを価格転嫁するのは難しい。打ち手としては、大型生簀による生産性改善・生産量拡大(ぶり)、2つの養殖会社の協働深化による収益力強化(まぐろ)、陸前高田市での養殖場拡大・加工場取得による数量拡大(銀鮭)などで、国内養殖事業全体での収益力向上を図る。

24年度の南米養殖事業において織り込んだ生簀繰りやコスト面、相場、在池魚評価の前提などについて教えて欲しい。

水産市況は回復していく見込みであり、水揚げ数量についても若干増えることを織り込んでいる。しかし、南部と北部で養殖環境が異なる生簀繰りの影響で24年度の生残率は不利な状況に働くことに加え、飼料価格高騰の影響を受けるなど、養殖コストの増加による影響が大きいと見ている。

南米漁撈事業(EMDEPES)は24年度計画では黒字転換を見込むが、過去10年間を振り返ると黒字だった年が少ないと感じる。水産資源のアクセス拠点として重要なのは承知しているが、ROIC経営を進める中で継続して赤字を計上する南米漁撈事業の今後をどのように考えているのか教えて欲しい。

EMDEPESは設立以来、白身魚由来の商品などで大きく貢献してきた。またチリ漁業法の規制により新規参入が出来ない事業である。継続的な赤字となっている理由は2020年ごろにホキの漁獲枠が半減したことが大きい。今後はフィレ生産拡大による市場開拓などで黒字化できると考えているが、今後の事業継続については見極めていく必要がある。

北米加工事業(UniSea)は近年の苦戦が目立っている。今後の打ち手や事業の方向性などの考え方について教えて欲しい。

UniSeaは40年近くニッスイのグローバルビジネスに貢献してきた事業であるが、近年はコスト構造が大きく変わってきたことから壁に直面している。今後は利益率の高いフィレ生産の増加や、新たなすけそうだら資源の獲得による生産面での固定費比率減少などを見込む。

国内食品事業における利益率の持続性や改善余地について教えて欲しい。

24年度は物流費の高騰など不透明な部分があり、23年度に比べて収益率は落ち込むことを見込む。今後については、単品別収益管理によるアイテム見直しの継続に加え、円安が一定程度進んだ場合は下期での価格改定を検討するなどの施策を検討している。

国内食品事業が24年度計画において減益を見込む背景について教えて欲しい。

物流費の高騰に加え販売数量減に対応するプロモーション費用などを織り込んでいる。23年度の国内食品事業全体の販売数量は値上げ疲れなどにより前期比95%を下回っており、これ以上販売数量が減少すると生産性も悪化しコストが増加する。今後は、増量キャンペーンなど小売・量販店に納得してもらえるような施策を打つだけでなく、「速筋タンパク」などの付加価値品の販売数量増などで収益性を高めていく。

練り製品の需要動向について教えて欲しい。

1パック当たりの単価が安いものや100円前後の商品は販売数量が落ちていないが、200円を超える価格帯の練り製品については消費量が落ちている。今後は消費量が落ちた商品の底上げ策が重要になると考えている。

北米食品事業が24年度計画において増益となるものの、白身魚原料の価格低下効果から見るとやや控えめの増益と見えるが、計画策定の背景を教えて欲しい。

白身魚原料がメインの家庭用は販売数量増もあり増益を見込む。業務用はえび原料をメインとしており、23年度は原料安による安定した利益確保が出来たが、24年度計画では原料価格の低下による価格対応などの要素を織り込んでいる。

EPA医薬原料の海外輸出について、24年度計画に織り込まなかった理由や今後の出荷可能性、出荷における見通しの変化などについて教えて欲しい。

高純度EPA医薬原料の欧州向け輸出について、当初は23年中の申請を想定していた。日本や米国で承認を取得していたことから、欧州においても順調に承認を取得できると考えていた。しかし欧州は独自の厳しい基準を設けており、EPAの成分分析についても幾つか指摘を受けたことから、当初のスケジュールからは遅くなったものの24年2月に申請業務が完了した。24年度計画にEPA医薬原料の海外輸出を織り込まなかった理由としては、欧州の承認は日本やアメリカとは異なる対応が必要であることを保守的に見込んだからであり、承認が取れれば出荷できると考えている。米国向け出荷については先方の在庫状況によるため当社から申し上げることはない。

24年度の営業CFの水準感について教えて欲しい。

22年度はコロナ禍で在庫を厚めにしていたことで営業CFが僅かしか出なかったが、23年度は偏った状況が改善され、24年度は大きな変動を想定していないことから、過去2年の平均である約300億円程度を見込んでいる。