フィッシュソーセージを使った「噛む力」研究 咀嚼回数が"お口の健康度"を映すことを確認 自宅でもできる簡単な口腔機能チェックが可能に

2025年11月11日

 株式会社ニッスイ(代表取締役 社長執行役員 田中 輝、東京都港区)は、京都光華女子大学と共同で、ニッスイ「おさかなのソーセージ」(フィッシュソーセージ)を使って咀嚼回数を測定することで "お口の健康度"を簡単に確認できる方法を検証しました。

 フィッシュソーセージを一口食べるときに「何回噛んだか」数えてみるだけで、日常の食事の中で自分の「噛む力」を意識することができます。こうした習慣が、「食べる力(口腔機能)」の維持やオーラルフレイル予防につながる可能性があります。

 高齢化が進むなか、「食べる力(口腔機能)」の低下は、フレイル(虚弱)や栄養不良の原因の一つとされています。しかし、口腔機能の衰えは自覚しにくく、初期症状は見過ごされがちであることから、日ごろから自身の口腔状態を把握して機能低下の兆候を捉えて対策することが有効です。

 そこで京都光華女子大学とニッスイは、日常で食べられているフィッシュソーセージを使って咀嚼回数を測定することで、口腔機能の状態を手軽に確認できる方法を研究しました。フィッシュソーセージは固さが一定であり、咀嚼回数の個人差を評価するのに適していることから、検査食に選定しました。

 今回の研究では、若年者91名の平均咀嚼回数は約30回。指定した量でも、個人で異なる任意の量でも個人ごとの噛む回数は安定していました。一方で高齢者では噛む回数が今回定めた規定量6.5gでは平均して24%、任意の一口量では平均して42%の増加が認められ、加齢に伴う口腔機能変化を示しました。高齢者は若年者と比べて、歯数が少なく舌圧が低いことから、噛む回数が増えるほど「一噛み毎の食べる力」が弱まっている可能性が示唆されました。このことから、フィッシュソーセージを使った咀嚼回数の測定が、口腔機能の簡易的な指標として有効であることが明らかになりました。

 この結果は、食べている量が以前と同じで噛む回数が増えた場合は、食物を時間をかけて細かくかみ砕き消化の良い状態になっていると想定されることから、栄養不良の心配はないと考えられます。一方で、食べる量が以前より減った状態で、噛む回数も減ってきたという場合は、注意が必要ということを示唆する内容になります。

 本研究の結果は、日本顎口腔機能学会 第74回学術大会(2025年11月15日~16日、岩手医科大学附属内丸メディカルセンター 入院棟)において、11月15日に発表します。

■魚肉ソーセージを用いた咀嚼回数測定による口腔機能評価の可能性
井上富雄1),森本かえで2),瀬川大2),尾形祐己1),天羽崇1),真田依功子1),松本恭子1),関道子3),木村真菜4),野口由里香5)
1) 京都光華女子大学 短期大学部 歯科衛生学科,2) 京都光華女子大学 看護福祉リハビリテーション学部 作業療法専攻,3) 京都光華女子大学 看護福祉リハビリテーション学部 言語聴覚専攻,4) 広島大学大学院 保健科学プログラム,5) 株式会社ニッスイ

【研究概要】
対  象:嚥下機能に問題ない被験者を以下の2群に分け実施しました。
      ・若年者群(年齢26.8±11.9歳)/91名
      ・高齢者群(年齢79.7±7.1歳)/29名
測定項目: ・口腔内診査(歯数・動揺度・顎関節の状態)
      ・咀嚼スコア(グミゼリーを使用した噛む力の測定値)
      ・舌圧(舌の力)
      ・最大咬合力
      ・一口量
      ・一口量のフィッシュソーセージを嚥下するまでの咀嚼回数
      ・規定量(6.5g)のフィッシュソーセージの咀嚼回数
※測定は2~3回行い、その平均値を使用しています。
検査食 :ニッスイ「おさかなのソーセージ」(フィッシュソーセージ)

【主な結果】
・若年者群も高齢者群もともに、任意の一口あたりの量と規定量6.5gの咀嚼回数は個体間ではいずれも大きな差が見られました。
・一方で、同一個人内では、任意の一口あたりの量と規定量6.5gの咀嚼回数の差は小さい結果でした。
・任意の一口あたりの量と規定量6.5gの咀嚼回数は、若年者群に比べて高齢者群の方がどちらも有意に大きい結果でした。
・一方で、若年者群と高齢者群両方で、いずれの咀嚼回数も「咀嚼スコア」や「咬合力」、「舌圧」との間に相関は見られませんでした。

一口量と一定量(6.5g)を咀嚼した時の
嚥下までの咀嚼回数の散布図

 本結果より、詳細なメカニズムは現時点では不明ですが、加齢によりフィッシュソーセージの咀嚼回数は増大することが分かりました。また、個人ごとの咀嚼回数は若年者群も高齢者群も比較的安定しているので、フィッシュソーセージの咀嚼回数を定期的に計測することによって口腔機能の変化を予測できる可能性があります。手に入りやすい市販のフィッシュソーセージを使って定期的にチェックすることで、「早めに歯科を受診する」、「食事を見直す」などの行動へつながることが期待できます。

 今後は、より多くの高齢者を対象に長期間の調査を行い、この方法の信頼性をさらに詳しく検証していく予定です。

 ニッスイでは、さまざまな食の可能性を追求し、「心と体を豊かにする新しい"食"」「社会課題を解決する新しい"食"」を創造する研究開発に取り組んでいます。今後も食品や素材に関する研究を積極的に行い、その成果を活用して、人々の健やかな生活やサステナブルな未来を実現する新しい"食"をお届けしていきます。

以 上

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