"養殖イノベーション"
への挑戦
技術で描く水産のカタチ

100年以上に渡り海の恵みを提供してきたニッスイ。
生産性向上、省人化、安全性と持続性の両立などを軸に養殖事業の高度化に取り組んでいます。

AIで養殖魚の生育を管理する技術を共同開発

水中カメラで撮影された生け簀の魚影。AI技術で測定対象魚の個体を検出し、同時に必要な複数箇所の測定を瞬時にこなしています。これらのデータとニッスイに蓄積されている情報から魚体重の算出が可能。ニッスイとグループ会社である黒瀬水産㈱、NEC㈱が共同開発した技術です。

養殖では、給餌量や成長速度などの情報を把握し育成に最適な給餌をすることが大切です。これまでは、生育管理のために、魚を一匹ずつすくい上げて体長・体重を計測していましたが、AI・IoTを駆使することで、魚へのストレスなく、少ない作業時間で、かつ多くの個体を計測し精度を劇的に向上させることができるようになりました。

魚の食欲に合わせて、食べたいときに餌を与える

海面養殖において、餌の量やタイミングが育成に大きく影響します。また、過剰な餌やりは無駄なコストにつながるだけでなく、海を汚す原因にもなります。そこでニッスイは養殖魚の自発的な摂餌と自動給餌を組み合わせた給餌システム「Aqualingual(アクアリンガル)®」を開発し特許を取得。ギンザケ「境港サーモン」「佐渡サーモン」などで実用化しています。

自動給餌と、給餌センサーで養魚の食欲を感知し自発的な摂餌を行う。餌時間、給餌量、給餌間隔などを遠隔で調整可能

沖合海域での養殖漁場の拡大に向けて

また、グループ会社である弓ヶ浜水産㈱のギンザケ養殖場では、日鉄エンジニアリング㈱と「大規模沖合養殖システム」の実証試験を実施。一般的に養殖は、沿岸域の海面や湾内で行われるケースが多く地元の漁業との干渉を避ける必要もあるため、大規模な養殖を行うことは困難。その現状を踏まえ、ニッスイでは大規模な沖合養殖の可能性の検証を進めています。

マサバ陸上養殖の事業化を目指す

2019年には、日本初となる大規模なマサバ循環式陸上養殖の共同開発に着手。ニッスイと子会社の弓ヶ浜水産㈱、日立造船㈱とともに2023年の事業化を目指しています。
陸上養殖は、陸上で魚介類を育てる養殖システム。マサバの陸上養殖では、地下海水を利用するためアニサキスなどの寄生虫や魚病のリスクが低減され、施設内で飼育水の汚れを処理し循環利用するため、環境にやさしい養殖技術になります。

配合飼料の大きな役割

近年、生餌に比べて養殖魚の栄養管理がしやすく、養殖漁場汚染のリスクも低減できるなどの理由から、養殖の中で「配合飼料」が大きな役割を担っています。ニッスイでは、グループ会社のファームチョイス㈱が配合飼料の生産をしており、クロマグロ用配合飼料「T~セージ」は、クロマグロが好む餌の物性や摂餌行動を調査。普通と異なる形状で栄養価の高い飼料を開発し、成長に必要な給餌量を1/3程度に削減でき、環境負荷も低減することに成功しています。

水中で配合飼料「T~セージ」を食べるクロマグロの様子

天然資源に頼らない"完全養殖"

近年、水産資源の持続的利用に向け、養殖が担う役割がますます高まっています。その中でも、資源保護の観点、成育を管理し出荷時期の調整が可能になるなどの観点から、天然の稚魚から育てる養殖だけではなく、人工ふ化させた親魚から育てる「完全養殖」を実現する魚種を増やすことが期待されています。ニッスイでは、現在サーモントラウト、ブリ、ギンザケ、本マグロ、サバ、エビ、カンパチなどの養殖事業を展開しており、天然の稚魚を用いない完全養殖の技術は、ブリ、ギンザケ、本マグロに拡大しています。これら養殖のすべての工程で、ニッスイ独自の研究開発の成果が生かされています。より環境負荷の低い手法を追求し、安全安心で「おいしい」養殖魚を安定的にお届けすべく、今日も研究を続けています。

ニッスイの養殖 3つの強み 1天然の稚魚を採取せず、生態系から独立した育成が可能「完全養殖」 2水質汚染などの環境負荷が少ない養殖方法「陸上養殖」 3養殖方法、飼料、給餌システムなど独自の技術開発「養殖技術」

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