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PROJECT STORY01

香り技術

を日本中の食卓へ。

生み出せ

「竜田揚げ」を

思わず食べたくなる

思わず食べたくなる
「竜田揚げ」を生み出せ

おいしそうな「香り」につられ、ついつい手に取り食べてしまう。
噛むほどに「香り」が口のなかに広がり、深い味わいを感じる。
みなさんも日常の中で、そんな「香り」を意識した経験があるのではないだろうか。

香りには、食欲を刺激したり、旨みを引き立たせたりする働きがある。
日本水産は、そんな「食」に必要不可欠な「香り」を研究し、
さまざまな商品にその研究を活用することで、商品力の向上に努めている。

ここで紹介するのは、日本水産が新たに生み出した「香り技術」を、
人気商品である「竜田揚げ」と組み合わせて販売を決めた、商品リニューアルプロジェクト。
研究から販売へとつながる、香りを追い求めた者たちの開発秘話を、ぜひご賞味いただきたい。

登場人物

研究

大学時代から食品の香りを研究している、唯一無二の研究者。

商品開発

丸山

竜田揚げや焼き鳥など、鶏肉を使用した商品の開発を手がける。商品開発部の若きエース。

生産管理

圦山

東京本社に在籍しながら、タイにある食品工場の生産管理と品質管理を務める。「ふっくら切身プロジェクト」にも登場。

商品化推進

権田

商品開発と営業の橋渡し役。生活者のニーズをキャッチし、次なるヒット商品を仕掛ける。

営業

中西

量販店などに自社の食品を売り込む、営業担当者。「社員インタビュー」にも登場。

※記載した内容はすべて、開発当時のものです。

さらなる売れ筋商品を
生み出したい

権田は宙を見上げ、思案していた。

彼が考えていたのは、冷凍食品の中でも人気商品である「若鶏の竜田揚げ」の商品リニューアルについてだった。2001年に新発売となったその商品は、これまでにも何度か商品改良を重ね、その度に販売数を伸ばしてきた。長い年月をかけて育ててきた竜田揚げだが、さらなるヒット商品へと押し上げたい。何か、商品が売れるための起爆剤となる改良を加えることはできないか......。思い詰めた彼は、商品開発の丸山に相談してみることにした。

「竜田揚げの改良に、知恵を貸してくれないか。」

丸山はその内容を聞き、商品のリニューアルには賛成だと思ったが、どう改良すべきか、頭を悩ませた。というのも、これまで幾度となく、味付けや食感、見た目などはブラッシュアップしてきた。何より、つい最近も大幅な商品改良を行ったばかりだ。

何かアイデアはないものか。グルグルと考えを巡らせる中で、中央研究所が研究している、「香り技術」を使うことはできないか、と思い立った。

話は少し脱線する。当社が実施した生活者調査の中に「冷凍食品の焼きおにぎりを購入する際に何を重視するか」を調べたデータがある。結果は「おいしさ」に次いで、「香ばしさ」を挙げる人が多かった。当然だが、「香り」は商品の購買を決める動機にもなり得るのだった。

その香りの研究に心血を注いできたのが、中央研究所の森だった。森の研究成果は定番商品「焼きおにぎり」に導入され、すでに成果を上げていた。「香り」に関する技術を、他の商品にも活用していきたい。森もまた、研究者の視点から、その技術を他に活かす道を模索していた。だからこそ、丸山から竜田揚げの話がきたのは、まさに渡りに船。彼と一緒に「竜田揚げ」と向き合う日々が始まったのだった。

竜田揚げ独自の
「おいしい香り」とは

竜田揚げには、どんな「おいしい香り」が含まれるのか。その特定には森自身の嗅覚を使った、香りの官能評価を行うことから始まる。自社・他社を問わず、さまざまな竜田揚げや唐揚げの香りを比べてみることで、どの商品にどんな香りの特徴があるかを調査した。加えて、分析機器も使用して、香りの細かな成分を明らかにしていった。

大まかに分類すると、食欲をそそる竜田揚げは主に「調味料と薬味」のフレーバーが香る。そして、それ以外の成分との絶妙なバランスで香りは成り立つことが判明した。この食欲をそそる香りを再現するために、森と丸山は実際に竜田揚げを調理してみることにした。

しかし、商品リニューアルの難しさは、既存品のおいしさや印象を損なわずに改良を加えることにある。原料の配合を変えることは、つまりは商品の肝である「おいしさ」を別物に変化させてしまう危険性もあった。既存品の味は変えずに、おいしい香りを付与すること。これが2人に立ちはだかるハードルとなった。

森と丸山は、何度も竜田揚げの試食を重ねては成分を調整し、味と香りを評価し続けた。その地道な繰り返しの末、納得のできる試作品が完成したのは、開発がスタートしてから数ヶ月後のこと。商品化を進められるか否かの鍵を握る、社内のプレゼンテーションを迎えることになった。

「......うまい。これなら営業も自信を持ってお客様に売り込める。」

権田は確信した。営業の経験もある彼は、商品の販売数を伸ばすには、まずは、営業が商品に自信を持っていないと失敗することを身に染みて知っている。商品を売り込むための「武器」は出来上がった。今回のリニューアルは、「香り」を科学的に追及した、かつてない商品になる。森と丸山の努力は必ず形にしたいと、心に誓った。

プレゼンテーションでの好感触を得て、森と丸山は安堵した。しかし、彼らのミッションはこれで終わりではない。次は、実際に工場の製造ラインを使った試作品づくりが待ち構えていた。

工場での失敗から生まれた、
特許技術

タイに、竜田揚げの製造工場はある。

バンコクからほど近い地域にある、その工場に足を運んだ森と丸山は、「新・竜田揚げ」の生みの親として製造ラインでの試作テストに立ち会った。巨大な製造ラインがゴウゴウとうねりをあげて竜田揚げをつくり出す。そして、出来上がった竜田揚げを一口食べたときのこと。

「あれ? 想定した香りが感じられない。ダメだ、失敗だ。」

率直な感想だった。しかし、こんなことではへこたれない。工場でのテストで予想外の事態が起きることは、よくある話だからだ。森と丸山にとって、商品開発の第2ステージがはじまったのだった。

それから、何度も日本とタイを往復し、社内での試作と工場での試作を重ねた。その結果、なぜ香りを再現できないかを、森は究明した。1つはスケールの違いにある。試作用のテストキッチンと工場では、作る量も設備も異なる。条件が異なり、思い描いたような商品を実現することができなかった。失敗の原因はそれだけではない。他の工程も見直し、香りが感じられない原因を究明した。

森はこれらの結果を踏まえて、香り成分を竜田揚げに閉じ込める「独自技術」の研究に挑んだ。この技術は企業秘密であるため、詳細の多くを語ることはできないが、ヒントは「油」にあった。この技術を使えば、香りを逃さずに保持することが可能になる。

その発見を導き出したのは、諦めを知らない探究心だった。

新技術を
取り入れるために

再び、タイの工場へ。改めて、新たな技術を利用して竜田揚げを試作してみると、今度は思い通りの香りが立ち上がるようになった。しかし技術の導入により、別の課題が出てきた。改良した作り方では、工程が増え、製造ラインの調整や人員の配置が必要となったのだ。それはつまり、生産性やコストに影響を及ぼすことになる。

そこで、工場内のスタッフの理解を得るために、新しい技術を導入する必要性を真摯に伝えることにした。その商品改善によって、販売数量の増加が見込め、つまりは工場の生産数量の増加につながるか、を。技術を導入した後の未来を、関わるみんなが想像し、納得できるように、言葉を尽くして考えを伝えた。

納得のいく商品を製造するには、人と人とのコミュニケーションが欠かせない。工場との関係性づくりに尽力した人物が、もう一人いる。生産管理の圦山(いりやま)だ。彼のサポートがあってこそ、海外工場での生産がうまくいくといっても過言ではない。しかし、圦山もまた、今回の竜田揚げの改良に悩まされることになる。

普段は日本を拠点としながら、タイの工場と連携を図る圦山に、一報が入った。

「竜田揚げの表面が、これまでの製品とは異なる。」
「新たに加えた工程は、導入できないかもしれない。」

工場から届いたのは、ネガティブな意見だった。しかし、「○○だからできない」と諦めてしまえば、それ以上、前に進むことはできない。何か問題にぶつかったとき、「やるためには○○を解決すればいい」と思考を変えるだけで、取るべき行動が変わり、得られる結果も飛躍的に向上する。これまでの生産管理の経験から得た、彼の教訓だった。

何より、商品を開発してきた仲間たちの努力を無駄にはしたくない。圦山は、日本にいながらタイの工場の士気を上げ、解決策を導き出すために、過去の経験を遡った。

すると、かつて生産管理を担当した商品で得た経験が、彼の脳裏をよぎった。「副原料、特に調味料は溶けやすさが異なり、投入する順序によって味に影響を与える。」もしかすると、この過去の状況と同じことが起こっているのかもしれない。そう思い、すぐさまタイの工場に連絡し、新たな工程を加えた箇所の確認を急いだ。

するとやはり、順序やタイミングなどがポイントだった。工程を再考すると、竜田揚げの表面の問題はなくなり、無事に製造を進められるようになった。

圦山は胸をなでおろした。「新・竜田揚げ」の新発売は、すぐそこまで迫っていた。

過去最高を記録した、
香り技術

みんなが紡いできたバトンを受け取った権田は、日本水産の営業に「新・竜田揚げ」のアピールをするべく奔走していた。「旨み引き立つ香りUP製法」と名付けられた香りの新技術を使った商品は、全国各地の営業に託されていった。

四国営業所に配属されて間もない中西も、営業のその一人だった。営業担当エリアである高知県と香川県を、自身の強みである行動力を発揮して動き回っていた。

「これまでの竜田揚げと新しい竜田揚げ、ぜひ食べ比べてみてください!」

商談には必ず商品を持ち込み、実際に食べてもらう。彼女には自信があった。言葉で説明するよりも、一度口にしてもらえれば、その良さがわかってもらえる、と。おいしい、とバイヤーが口にすれば、すかさず、売り場拡大の提案を重ねた。

「中西ちゃんの勢いには、まいったな〜。」

彼女の提案には、商売っ気というよりも、良い商品を届けたい、という素直な姿勢が見て取れる。バイヤーは、彼女の心意気を買っていた。

商品が発売されると、もともと人気のあった竜田揚げは、売れ筋商品となった。中西の担当先では、前年比2倍を超えるところも少なくなかった。営業としては、担当先の売上が伸びることほど、嬉しいことはない。お客様の喜びが、自分の喜びとなって返ってくる。そしてそれがまた、彼女の次なる原動力へとつながっていくのだ。



リニューアル後の竜田揚げは全国的にも好調な売れ行きをみせ、日本水産全体での販売実績は前年比140%以上の実績をもたらした。この実績は、香り技術が生活者に認められた結果であった。

このプロジェクトの成果を受け、この香りを付与する技術は、他の商品へと利用され、多くの商品に導入されることになった。そしてその商品たちが、日本全国、さらには世界中の食欲を満たしていく。

おいしさのバトンは受け継がれ、そしてまた、これまでにない魅力的な商品が生まれていく。それは、日本水産が連綿と紡いできた、商品づくりの伝統なのだ。

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