Date of interview

June 21-23, 2025

Location

Central Singapore

singapore #1

(シンガポール前編)

多民族社会、シンガポール。 その国で、フィッシュバーガーが選ばれるワケ。

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VOLUME 1

フィッシュバーガー

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Date of interview

June 21-23, 2025

Location

Central Singapore

Introduction
今回の舞台は、シンガポール。この国では、フィッシュバーガーがファストフードの定番メニューとしてなじんでいる。その理由とは? 現地の暮らしや価値観に目を向けることで、フィッシュバーガーとシンガポールとの関係に迫っていく。

ここは、多彩な文化の交差点。

ルーツが異なることによる、文化や価値観の違い。それらは入り乱れているのではなく、うまく調和がとれている。

中華系・マレー系・インド系など、多様な民族がともに暮らすシンガポール。 チャイナタウンには、漢方薬店や金物店、飲茶レストランが軒を連ね、カンポン・グラムにはイスラムやマレー文化の美と静けさが、リトル・インディアにはインドの色彩とスパイスの香りが満ちている。あらゆるところから、各国の食や文化が感じられる。

多様な価値観が息づく国の、思いやりイズム。

フィッシュバーガーとシンガポールの関係をひも解く上で注目したいのが、その国民性だ。シンガポールに移住して数十年になる、日本人女性に話を聞いた。多様な価値観を持つ人々がともに暮らす国には、その風土がつくり出す「人への思いやり」を感じるシーンが多々あるという。

例えば、電車やバスなどの公共交通機関を利用するときのこと。そこでは、人種や民族の隔たりを感じることがほとんどないどころか、誰もが必ずと言っていいほど、子どもやお年寄りに席を譲るそう。

多言語の案内看板。ここにも、多民族社会ならではの思いやりが感じられる。

女性が現地の会社に勤めていた頃の、ユニークなエピソードもある。実はシンガポールには、一年のうちに4回お正月が訪れる。グレゴリオ暦・中国の旧正月・イスラム教、ヒンドゥー教の新年と、民族や宗教によってそれぞれお正月が異なる。だから休暇に入るときは、仕事の引き継ぎなどに協力的。お互いが民族間のちがいを把握した上で、思いやりをもちながら働いているという。

いっしょに食べたい。だから思いやる。

同じ場所で、同じものが食べられる。フィッシュバーガーは、その喜びを支えてくれる。

食に関する思いやりもある。例えば、マレー系民族に多いムスリム(イスラム教徒)は、食事にいくつかの制限がある。では、シンガポールではそういった友人と食事をするとき、どうしているのだろう。女性いわく、その友人が食べられないものがちょっとでも置いてあるお店は絶対に選ばないそう。

ときどき行われるホームパーティーでも、考え方は同じ。「誰かが食べられないものは用意しないし、持ち寄りません」食べられない人を排除するのではなく、“みんなで食べられるもの”を選ぶ。宗教上の規律からビーフやポークが食べられない人もいるシンガポールでは、比較的多くの人が食べられる魚料理が、こうした場面で食の大事な選択肢になっている。

おいしさと、選びやすさ故の、定番化。

外食が根付くこの国では、ファストフード店も強い存在感を放つ。大手ハンバーガーチェーンでは、ハラル認証(ムスリムが口にできることを許された証し)を取得している。これらの店舗でフィッシュバーガーは、魚を使った、食べやすくておいしいメニューとして多くの人に親しまれ、ファストフード店の定番メニューとなっている。

バンズに挟まれているのは、大きくて厚みのあるフィッシュフライ。

人のつながり。その間には、フィッシュバーガー。

それぞれの食習慣や制約を考慮し、誰もが食べられるものを選ぶ。その積み重ねが、食卓に多様性を映し出している。シンガポールでは、異なる背景を持つ人々が一緒に食事をすることはごく自然であり、フィッシュバーガーはそのような場で選ばれやすいメニューのひとつになっている。

異なる民族の人が一緒に食事をし、おしゃべりをする。そんな日常にフィッシュバーガーの存在がある。

後編では、こうした食文化を支える現場として、タイ・バンコクにあるニッスイグループの食品工場にお邪魔する。そこでは、フィッシュバーガーに欠かせないフィッシュフライを生産している。果たして、どのような工程を経て作られているのか。その具体的な生産過程を追っていく。

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