Date of interview

June 21-23, 2025

Location

Central Singapore

singapore #2

(シンガポール後編)

潜入!こだわりと信念の食品工場。 白身魚がフィッシュバーガーになるまで。

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VOLUME 2

フィッシュバーガー

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Date of interview

June 21-23, 2025

Location

Central Singapore

Introduction
多民族・多様な宗教が共存するシンガポール。そこでフィッシュバーガーは、ファストフードの定番メニューとして、人々の食の大事な選択肢のひとつになっていた。シンガポールからひとっ飛びして、タイ・バンコクにあるニッスイグループの食品工場を訪れる。バンズの間に挟まれたフィッシュフライを生産するその現場では、いったいどんな発見が待ち受けているだろう。

フィッシュバーガー、その正体に迫る。

そういえば、フィッシュバーガーのフィッシュとは、いったい何の魚のことなのだろう? 食べながら、ふと、そんな疑問が湧いたことのある人もいるかもしれない。

フィッシュバーガーのパテ。その“フィッシュ”が何の魚であるかまでは、意外と知られてなさそうだ。

結論から言うと、「スケソウダラ」「ホキ」「マダラ」「メルルーサ」などの白身魚が使われている。特にスケソウダラに関しては、ニッスイでもちくわやカニカマ、フィッシュソーセージなどの原料に使用している、日本の食卓に身近な存在の魚だ。クセが少なく、淡泊な味わいが特徴。だからこそ、フライにするとよりおいしく、他の食材やソースとの相性もよい。フィッシュバーガーに使われる魚の王道的存在になっている。

では、その白身魚がフライになるまでには、いったいどのような工程をたどっているのだろう。

安全・安心の徹底が、毎日のルーティン。

訪れたのは、タイを拠点に水産加工事業を行う、タイデルマール社(ニッスイグループ)の食品工場。敷地面積41,600平方メートルは、東京ドーム約1個分の広さ。従業員は600人余り。

ではさっそく、フィッシュフライの生産エリアへ……といきたいところだが、そこに入るまでには、衛生管理のため、入念な準備を要する。まず、衣服全体にくまなく粘着ローラーをかけ、真っ白な作業ユニホームに着替える。そこでさらに粘着ローラーをかけ、しっかりとほこりや毛髪・細かいごみを取り除いていく。

手洗いの工程も念入りに。せっけんで手もみ洗いをし、ブラシで爪まできれいにする。そのあとは専用の溶液に手指を浸して殺菌。清潔な水ですすいだら乾燥機で乾かし、アルコールスプレーを使って消毒。衛生手袋をつけるのは、それが完了してから。ここでは省略するが、他にいくつもの準備工程があり、厳しいルールが確立されている。そのような徹底した衛生管理を、スタッフは毎日こなしている。

衛生管理のためのさまざまな準備も、スタッフにとっては日常であり、あたりまえ。

人だけではない。生産ラインで稼働する機械についても、入念な清掃と検査が行われている。安全・安心な食を“確実に”届ける。それは、作業のときにだけ意識していればいいわけではない。準備は、作業に取り掛かる前からすでに始まっている。

ノウハウ総動員!技と工夫のオンパレード。

生産の現場は、まさに驚きの連続。そこでは徹頭徹尾、正確さと効率が突き詰められている。今回は、冷凍された白身魚がフィッシュフライになるまでの流れを見ていく。

解凍後、いかにスピーディーに加工を進められるかの戦いでもある。

まずは、魚を解凍するところから。巨大な容器に張られたろ過水に浸かる、大量の冷凍魚。ここでのポイントは、その温度だ。解凍時の魚の温度は5度以下になるよう、適切に管理される。このとき、魚は最もさばきやすい状態になる。

次に、魚を三枚におろしていく。ここは手作業で魚をさばくスタッフの腕の見せ所。中骨から身を切り離す正確さと素早さが求められる。早い人だと、一尾の魚がものの1分で中骨と2つの身に分けられる。そしてどういうわけか、スタッフは皆、床から数十センチ離れた台に乗って作業している。聞けば、テーブルの高さと合わせることで作業がやりやすくなるだけでなく、台の浮力が足腰の負担軽減にもつながっている。しかも、床の清掃もしやすい。作業効率を上げるためにできることが、工場内では徹底して行われている。

  • 三枚おろしでは、骨などが残らないようにさばく。

    三枚おろしでは、骨などが残らないようにさばく。

  • その作業は、台で行われることでさらに効率的に。

    その作業は、台で行われることでさらに効率的に。

三枚おろしで残った小さな骨は、人の目と指先の感覚を頼りに丁寧に取り除いていく。ここが、安全・安心でおいしいフィッシュフライを届けるための、いわば「最後のとりで」。この食品工場では、骨が残っていること(残骨)によるクレームが極めて少ない。数値にして、およそフィッシュフライ400万個に1個。他社に比べても圧倒的に低いこの数値は、絶対に骨を残してなるものかという、スタッフのプロ意識の高さを物語っている。残骨ゼロを前提に、手作業による除去後、身を光に透かして骨や異物が残っていないかを確認する。この徹底した確認によって、残骨を限りなくゼロに近づけている。

身だけになった白身魚は、後の加工で四角いパテ状に成形しやすくするため、長方形のケースに敷き詰めて急速冷凍する。隙間なく互い違いに並べられたその姿は、まるで魚のミルフィーユのよう。この、何層にも重ねるやり方が、口にしたときのふわっとした食感を生む。既にとてもおいしそうな見た目をしている。

  • 下から光を当てることで、わずかな小骨も見落とさない。

    下から光を当てることで、わずかな小骨も見落とさない。

  • 無駄のない合理的な並べ方は、食感のよさにもつながっている。

    無駄のない合理的な並べ方は、食感のよさにもつながっている。

凍結された身は、機械で正方形にカットされ、フィッシュバーガーに挟まれているおなじみのあの形に。バッター液(具材に衣をつけるための液)をまとわせてパン粉の衣を付けたら、再び急速冷凍。マイナス25度の冷凍庫で一時保管した後、冷凍状態で各国の供給先へと出荷されていく。

ちなみにタイデルマール社では、持続可能な漁業に与えられる「MSC漁業認証」を取得している漁業で獲られたスケソウダラを使用している。また、その加工・流通の過程を適切に管理していることを示す「MSC CoC認証」を取得。これからもおいしいフィッシュフライを供給し続けるために、持続的な水産資源の利用を目指している。

働きやすさも、おいしさにつながっている。

工程の流れを追っていく中で、気づいたことがある。それは、作業を行うスタッフは、非常に高い集中力を長時間維持し続ける必要があるということ。どのようにモチベーションを保っているのだろうか。

話を聞いてみると、皆口をそろえて「この仕事が好きだ」と言う。「同僚はいい人ばかりだし、会社への不満も特にありません」お昼休みには、食堂で提供される食事をみんなで楽しんでいる。マッサージチェアが並んだ部屋では、おのおの休息をとっている人もいた。福利厚生もかなり充実している。

もちろん、個人の能力や心がけもある。しかしそれと同時に、工場内ではスタッフのモチベーションを維持する環境がしっかりと整備されている。人事部の責任者はこう話す。「商品のおいしさを支えるには、スタッフに長く安定して働いてもらうことが大切です」だからこそ、作業場の工夫だけではなく、スタッフが生き生きと働くことのできる場づくりまで考えられているのだ。

「食に関わる仕事がしたかったんです」そんな動機からここで働きはじめた彼女は、即答で仕事が好きだと教えてくれた。

スタッフ満足度の高さを裏付ける事実もある。この工場では、親子で勤めている人たちが多い。それほどまでに働きやすい環境ということなのだろう。

アジアNo. 1は、スタッフの幸せの延長線上にあり。

柳原社長(左)と、人事部のカノクワンさん(右)。お二人が最もまなざしを注いでいるのは、食品ではなく「人」かもしれない。

いい職場だから、いい仕事ができる。その結果、工場全体のパフォーマンスが上がり、高品質な食を安定して世の中へ届けられる。それがお客さま満足につながり、信頼され、継続的な受注につながる。ここでは、そんな好循環が生まれている。フィッシュバーガーを楽しむ人たちの笑顔の背景には、工場内の考え抜かれたシステムと、働く人々の丁寧な仕事があり、それらが支えのひとつになっている。

それでも、まだまだよくしていける部分がたくさんあるという。スタッフのさらなるモチベーションの向上、そのための人事・評価制度、福利厚生の充実など。お客さま満足をかなえるためのニッスイグループの志は、現地工場で働くスタッフにも向けられていた。


「目指すは、売り上げ・品質ともにアジアNo.1の水産加工食品工場になることです。そのために、食の安全・安心、品質管理から生産性、お客さまとスタッフの満足、サステナビリティに至るまで、できることはすべてやっていきたい」そう語る柳原社長。徹底という言葉がよく似合うこの工場から、これからもフィッシュバーガーのおいしさが、世界に届けられていく。

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