Date of interview

June 11-13, 2025

Location

Ho Chi Minh

vietnam #2

(ベトナム後編)

現地の味覚を信じて進め! “麻辣味カニカマ”はこうして生まれた。

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VOLUME 2

カニカマ

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Date of interview

June 11-13, 2025

Location

Ho Chi Minh

Introduction
ベトナム前編では、ニッスイのチルド(冷蔵)のカニカマが子どもたちのおやつの新定番になっていることをお伝えしてきた。後編では、この商品の開発と販売を担当している、ニッスイ海外事業推進部 企画戦略課の猪狩早雅さんに話を聞く。プレーン味・チーズ味と並ぶ、スパイシーな味わいが特徴的な麻辣(マーラー)味のカニカマの開発秘話に迫る。

ベトナムに見いだした、チルドカニカマの可能性。

現地の人との対話が、新たな発見につながる。その発見は事業にも役立つ。

ベトナムでのカニカマの展開。それは、以前からアジア圏への事業拡大を見据えていたニッスイが、紆余曲折の末にたどり着いたひとつの方向性でもある。

「アジア諸国の食にはすり身製品がよく登場し、可能性を感じていました」そう語る猪狩さん。ニッスイの海外事業推進部が、現地のビジネスパートナーとコミュニケーションを取りはじめ、ベトナムでの本格的なマーケット開拓に乗り出す決意を固めていったのは、2018年頃のこと。

コロナ禍の影響で動き出しは遅れたものの、現地の駐在とやりとりを行いながら、カニカマを軸に商品展開していくことに話がまとまった。

「麻辣味はどうでしょう」協力工場からの意外な提案。

最初に議論したのは、カニカマの味付けについて。現地の代理店や協力工場の担当者と話し合い、まず、プレーン味とチーズ味のカニカマを考案。その後、新商品としてもうひとつの味を出すことに。そこで工場側から「麻辣味はどうか」という意外な提案を受ける。当時、ベトナムの若者の間では、麻辣味の食の人気が高まっていた。その兆しをいち早く捉えてのことだった。

猪狩さんには、ある信念がある。それは「なるべく現地の人の感覚を信じる」ということ。例えば、日本にはない味だからといって、否定しない。麻辣味のカニカマを試食したときも同様。「少し辛すぎるのでは? というのが、正直な感想でした。だけど、現地の声を信じてみることにしました」

現地には現地の感覚がある。その感覚を「知る」ことはできても「分かる」ことは難しい。

ニッスイが大事にしていることのひとつに、品質管理がある。おいしくて安全な食を提供する。そのための基準が、ニッスイでは非常に厳しく設定されている。現地でも同様で、それが信頼獲得につながっていく。猪狩さんもそんなニッスイの姿勢を大事にしながら、商品と向き合っている。

「つくる」と「売る」の両刀を持て。

猪狩さんがかつての上司に言われた、印象に残っている言葉を教えてくれた。

「つくる」と「売る」、両方の経験がある人は強い

海外でマーケットをつくっていくには、その国の文化に合わせて開発した商品を売り込んでいく「企画力」と「胆力」が大切。海外事業推進部では、そんな考え方が根底にある。そしてニッスイには、商品開発も販売も経験できる機会がある。それらが土台となって、ベトナムでのカニカマ人気を導いた。

コンビニのマネジャーとのやりとりにも自然と熱が入る。

もちろん、商品を一から開発・生産し、そこからさらに営業を行っていくわけなので、それだけやるべきことは多く負担も大きい。しかし、その分やりがいも大きい。「自分が開発に携わった商品が店頭に並んでいるのを見たときはやっぱりうれしいですね。しかもそれが日本ではなく海外ですから、その喜びはひとしおです」

トライしてエラーして、またトライ。

ほぼ毎月ベトナムを訪れる猪狩さん。できるだけ「会って話す」ことを大切にしている。

これまで、すべてがとんとん拍子だったわけではない。多くの事業がそうであるように、チルドのカニカマの開発・生産・販売の裏にも、数々のトライ&エラーがある。実は、ベトナムで日本国内のヒット商品の導入に挑戦したこともあった。

ところが、期待は裏切られた。「どれだけおいしくても、現地の文化に根ざしていない食を定着させることは、相当にハードルが高いということです」そのときに得られた気づきを糧に、今度はベトナムのすり身文化に照準を合わせた。

子どもの定番おやつを、ベトナムの国民食へ。

ホーチミンの子どもたちのおやつの定番になりつつある、チルドのカニカマ。商品の取り扱いがある地域はまだ限られるが、コンビニだけでなく、現地の大型スーパーにも広がっている。

とあるスーパーのマネジャーに話を聞くと、お母さんが子どもに買っていくことが多いそう。さらに麻辣味カニカマは、大人にも食べられている。子どもに人気のチルドのカニカマ市場をさらに広げていくために、大人をターゲットにした商品展開も考えられそうだ。

今はまだ、ホーチミンのおやつの定番。この街から、カニカマがベトナム全土で愛される日を夢見て。

「海外で新しい“食”を展開して、ニッスイブランドの商品を広く定着させていく。そんな市場を作っていきたいですね」猪狩さんの言葉に、決意がこもる。ベトナムのいたるところでニッスイ商品を見つけることができる未来は、それほど遠くないかもしれない。

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