養殖魚の肉質評価(肉質の数値化)

官能評価と機器分析によって、養殖魚の肉質を数値化し、総合的に評価する研究を進めています。

ニッスイは、親魚の育成、種苗生産、飼料などの技術を研究・開発しています。
さらに、生産した養殖魚の品質評価のために、特に肉質に関する研究を進めています。

【写真】レオメーターによる物性値の測定

レオメーターによる物性値の測定

魚の色、歯ごたえ、匂いなどを客観的に評価する官能評価を実施

養殖魚の肉質評価にはさまざまな要素が含まれており、客観的な評価は非常に難しいと言われていますが、中でも重要な手法が「官能評価」です。

官能評価とは、検査者(パネルといいます)が魚を実際に食べて味わってみて、魚の色や歯ごたえ、匂いなどを客観的に評価するしくみです。
例えば2つの刺身を見たときに、どちらが赤い、硬いといった主観的な情報ではなく、客観的な評価をするためには、情報を数値化する必要があります。

実際にぶり刺身Aとぶり刺身Bの官能評価を実施して、その肉質を調査した結果をご紹介します。

【ぶり刺身Aとぶり刺身Bの官能評価】

【図】ぶり刺身Aとぶり刺身Bの官能評価
【ぶり刺身Aの方が評価が高い】
  • 色調:血合筋が鮮やかで、白身の白色が強い
  • 刺身が硬い
  • 酸味が弱く、すっぱくないことが予想される

各項目を見ると、ぶり刺身Aはぶり刺身Bと比べると、血合筋(※1)の色調の評価が高く、肉の色調や硬さの評価も高いことがわかります。
一方、生臭いにおいと酸味については、ぶり刺身Bの方が強いことがわかりました。

機器分析を実施し、官能評価との整合性を確認

次に機器分析を用いて、官能評価の結果との関係付けを行います。

【機器分析を用いた、ぶり刺身の血合筋の色調値 a*値(※2)の測定結果】

【図】機器分析を用いた、ぶり刺身の血合筋の色調値 a*値の測定結果
官能評価における「血合筋の色調値」の評価結果と同じ

色調に関しては、色彩色差計(※3)を用いて色度を数値化します。
血合筋の評価は赤色の強弱が重要なので、赤色値を測定します。
このa*値は、+値が大きいと赤色が強く、-値が大きいと緑色が強いことを表しています。

ぶりの刺身の血合筋のa*値を測定した結果、上図のように、ぶり刺身Bの方がa*値が低いことが明らかになりました。
この結果は、官能評価における「血合筋の色調値」の評価結果と同じになりました。

刺身の硬さ、におい、脂肪酸組成やアミノ酸についても測定

他にも、刺身の硬さについては、レオメーター(※4)による測定を実施しています。
また刺身のにおい、特に生臭い匂いや飼料臭についても品質を決める重要な要素になりますので、臭気成分を収集してGC-MS(※5)によって測定し、検体ごとの臭気の特徴を調べています。

また、おいしさに関係すると言われている、筋肉中の脂肪酸組成(※6)についてはGCで検査し、アミノ酸(※7)についてもHPLC (※8)で測定して、肉質検査を実施しています。

【写真】GC-MSによる臭気成分の測定

GC-MSによる臭気成分の測定

養殖事業への貢献

このように、官能検査と機器分析による評価を行って、養殖魚の肉質を数値化し、総合的に評価する研究を中央研究所を中心に進めています。その結果、ぶり用の飼料として「マブレス」の開発の成功を収めています。

このような肉質評価の仕組みがあると、例えば自社製品の品質を定期的にモニターすることで品質の確認に役立っています。

また、養殖事業では肉質評価以外にも飼育管理技術や魚を〆る技術なども重要であり、これらは肉質へも大きく影響します。

よって、肉質を評価することは魚を評価するだけでなく、養殖技術を評価する上で非常に大切な仕事です。

用語集

※1:血合筋
魚の身を構成する筋肉には白い筋肉と赤い筋肉があります。血合筋は赤い筋肉を指します。血合筋は白い筋肉(普通筋)と比べるとミトコンドリアが多く、また酸素の運搬に関与するヘムたんぱく質の含量が多いことが特徴です。
※2: a*値
色彩色差計で測定した色を数値化した色度のひとつ。肉質を表すためにL*a*b*表色系を用いますが、この表色系では、明度をL*値、色度をa*値、b*値で表します。このうちa*値は、+値では赤色を、-値は緑色の強さを表しています。
※3: 色彩色差計
色を間違いなく正確に伝えるため、色を数値で表す計測機器のこと。 物体の色を表すのに使用されています。
※4:レオメーター
物体の弾力的な特性(物性)を測定する機器。刺身の硬さを数値化する際に使用しています。
※5: GC-MS
ガスクロマトグラフィー‐質量分析計のこと。気化させた分子をクロマトグラフィーにて分離する装置と、分離した分子の質量を測定する装置をあわせた機器です。臭気成分はGC-MSを用いて、脂肪酸組成の分析はGCを用いて行っています。
※6:脂肪酸組成
可食部に含まれる脂肪酸の組成のこと。まずは可食部から脂質成分を抽出し、脂肪酸を誘導体化後にGCを用いて脂肪酸の一斉分析を行っています。
※7:アミノ酸
アミノ基とカルボキシル基をもつ有機化合物の名称。アミノ酸は呈味性があり、食品のおいしさに寄与していると考えられています。
※8:HPLC
高速液体クロマトグラフィーという装置。分離カラムと高圧の液体を用いて化合物を分離する仕組みで、アミノ酸の一斉分析を実施しています。